糖鎖は科学の最前線です

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糖鎖研究の最前線

ポストゲノム
ゲノムを超える生命現象の鍵ー「糖鎖」とは?(68頁〜73頁)
血液型からガンの移転までに関わる“細胞の顔”

ゲノム解読完了後、「ポストゲノム」として生命科学分野で注目されているのが「糖鎖」である。4文字でできた単純な暗号であるDNAよりも、複雑な情報をもつ糖鎖は、研究がむずかしい。しかし糖鎖は私たちの血液型や受精に関係するだけでなく、インフルエンザの感染やガンの転移など病気のメカニズムにもかかわっている。糖鎖の研究によって、これまで分からなかった生命現象を明らかにしたり、新たな治療薬を開発したりできるという。糖鎖研究の最前線を紹介しよう。

協力 谷口直之 大阪大学大学院医学系研究科教授

2003年、「ヒトゲノムの解読が完了した」と発表された。しかし、今でも生命現象のすべてはわかっていない。また、ゲノムの解読によって、病気にかかわるさまざまな情報がえられ、創薬のあり方がわかるといわれたが、それには時間がかかることもわかってきた。では、ゲノム解読完了という目標を終えた。
今、次に何を解明するのか。「ポストゲノム」ともいわれる、その重要な候補の一つが「糖鎖」である。
糖鎖と聞いてもぴんとこないという人も血液型ならば知っているだろう。私たちがよく耳にするA,B,O,ABという4種類の型に分類する「ABO式血液型」は、赤血球表面の糖鎖の形によって分類されている。
この糖鎖とは、まさに「細胞の顔」ともいわれる物質である。赤血球だけではなく、糖鎖は、細胞と細胞がコミュニケーションをとる場で重要な役割を果たしている。たとえば卵子と精子が出会う受精の現場や、高速に情報を伝える神経の構造などだ。私たちの体の維持に必要なだけでなく、多くの病気にもかかわっていることがわかりつつある。たとえば、がん細胞では特殊な糖鎖が出現する。また、がんの転移やウイルス侵入の際には、私たちの細胞の糖鎖が、“悪用”される。この細胞の顔を理解することによって、生命現象を明らかにしたり、新しい治療薬をつくろうという研究が、今まさに注目されている。
「糖鎖」の働きを示す概念図
細胞の顔である「糖鎖」が体内のさまざまな場面で、細胞どうしのコミュニケーションにかかわるイメージをえがいた。細胞どうしが糖鎖を介して、結合することで作用する(中央)。糖鎖がかかわる細胞どうしのコミュニケーションとして、高速に情報を伝える神経の構造(左上)や、白血球が行う血管壁の細胞をパトロール(左下)、受精(右下)などがある。

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